


●かぶせる処置(クラウン)
前歯のクラウンでは自然感の回復が重視されますが、その条件の第一は、歯ぐきの健康回復です。歯肉に炎症があるような状態で型を採ったりクラウンをセットしたら、かえって歯ぐきの健康をそこねてしまいます。きれいな仕上がりも予後も期待できません。
細心の注意を払ったクラウンも、からだにとっては異物です。歯ぐきの健康維持、かみ合わせのトラブルを防ぐために定期的な管理が欠かせません。
どんな精密につくられたクラウンでもからだにとっては異物です。色かたちの調和はもちろん、歯ぐきを傷めないなど細心の注意を払う必要があります。
左:歯肉の十分な厚みを計算しなかったクラウンによる炎症
メタルボンドポーセレン(金属焼き付け陶材冠、セラモメタルクラウン)
ちょうど七宝焼の要領で金属の表面にセラミックを焼き付けたクラウンのことです。
様々な色のポーセレンの粉を練り、重ね合わせて、その人の歯の色やかたちを精巧に再現できるために1970年代から現在まで、自然感を再現するクラウンの代表的な製作法になっています。このため歯科技工士の腕のみせどころです。質の高い治療をする歯科医師は、患者さんの歯の色を記録する作業(シェードテイキング)を歯科技工士にさせるために、歯科技工士を患者さんに紹介することがあります。
保険で処置できないので、略称「メタボン」は、自費治療の代名詞にもなっていますが、真っ白なだけのかたちの不自然な粗悪なものも少なくありません。
健康な歯肉を回復し、きれいな仮歯(プラスチックでつくる仮の歯)をつくって、最終的なできあがりにそっくりの状態を試すことが、良質な治療の条件です。
利点/欠点
- 利点
- その人の歯と同じオーダーメイドの自然な歯の色とかたちを回復できる
- 欠点
- 自然な色をつくるためには歯の削除量が多くなる
- 口のなかで調整しにくい
- こすれ合う歯のエナメル質が磨耗しやすい
- 製作に技量を求められるので、仕上がりの質の差が著しい
- 内側は金属冠なので口のなかに異種金属があるとガルバニー電流を生じ、味覚障害、金属の腐食などを起こすこともある。
- オーダーメイドなので費用がかかり、保険では処置できない。
(自費診療の費用の目安として使われるが、1歯につき、歯の形成など土台づくりを合わせて7万円〜20万円くらい。一般に都市中心部ほど高額になっています。)
硬質レジン前装冠
メタルボンドポーセレンのセラミックの部分をプラスチックでつくるクラウンのことです。
磨耗しやすく、そのために咬合面は金属でつくります。美しさと耐久性は劣るが、メタルボンドポーセレンとほぼ同じ利点と欠点があります。保険で処置を受けることができるが、実際上は保険による評価が低いのでポーセレンと同程度の自然感は期待できません。その分、費用は安くなります。
ポーセレンジャケット冠
古くからある美しい自然感をもったクラウン製作法。
強度が不足するので適応症が限られます。保険では処置できません。
レジンジャケット冠
プラスチックだけでつくった冠。近年、物性、自然感の再現性がともに向上している。プラスチックとセラミックを複合した材料は、強度も耐摩耗性も高く、ポーセレンジャケット冠よりも適応症が広くなっています。費用はポーセレンに比較して安価だが、費用が安ければ美しさはあまり期待できません。保険可。
オールセラミッククラウン
セラミックを溶かして型に入れて固める方法でつくられたもの。透明感が高く、精度が高い点が長所。保険では処置できません。

【コラム】差し歯(継続歯)
継続歯とは前歯の処置に使われるもので、歯根の中に埋まる金属部が歯冠と一体になった人工の歯。しばしば脱落、歯根の破折が生じます。保険で処置できるので、利用されています。
似ているがよりよい処置法は、土台を金属などでつくって、そこにクラウンをかぶせる方法です。ただ歯根の土台の形態が良くないと継続歯と同じ結果になります。
差し歯が割れたら、多くは抜歯になります。
よく間違われる三種の人工の前歯。
●継続歯
●クラウン
●インプラント
金属鋳造冠
金属色が嫌われるので前歯部には用いません。保険で処置を受けることができるのは次の材料です。
12%以上金を含んだ
●銀パラジウム合金
●ニッケルクロム合金
●銀合金
口のなかに異種金属があるとガルバニー電流を生じ、味覚障害、金属の腐食などを起こすことがあります。非貴金属の場合は腐食による変色は避けられません。
貴金属によるものは、味覚を障害しにくいだけでなく、口のなかでの調整がしやすく、金属の伸びや粘りがあるので歯にぴったり合わせやすい。費用面では、メタルボンドに比べれば少し安くなります。部分的に覆うクラウンを除いて保険適用外。
【コラム】帯冠金属冠
精密に鋳物でクラウンがつくれるようになる前、かみ合わせ部分と歯の周りを別々につくって溶接していました。保険で処置できるため一部でまだ行われています。歯の周りの形態が悪く、美しさはもちろん歯ぐきにも良くありません。ただ歯をほとんど削らないために予後は意外に悪くありません。
奥歯のかぶせる処置
奥歯のかみ合わせ面は、微妙な調整のためには金属のままにしておく方が良いと言えます。金属は、自然にからだに都合よく変化しやすく、かつ長い期間維持する適切な硬さがあります。クラウンは、土台とピッタリ合い、かみ合わせがしっくり合わなければ、トラブルを引き起こすことにもなりかねません。土台づくり(築造・形成)と型とり(印象)、かみ合わせの記録と調整に細心の注意を払います。
しかし、細心の注意を払ったクラウンもからだにとっては異物です。歯ぐきの健康維持、かみ合わせのトラブルを防ぐために定期的な管理が欠かせません。
クラウンをはずしたところ。歯ぐきに炎症があり、むし歯ができている。