


●歯髄(神経)の治療
歯髄は、固い歯の中の血管と神経が集まったところ。歯医者さんが言う「神経の治療、根の治療」には大きく分けて四つあります。

a 歯髄を保護(直接歯髄覆罩など)
b 歯髄を一部除去(生活歯髄切断)
c 除去して空洞を封鎖(抜髄)
d 感染して腐敗した組織を除去して歯の中(根管、歯髄腔)を清掃・封鎖する処置
暫間的直接(間接)歯髄ふくとう



ズキズキする痛みが出てしまってから、歯髄を守るためには、患者さん自身が痛みに耐える必要があります。細菌によって軟らかくなった穴の底の象牙質を除去すると歯髄が露出してしまうことがあります。歯髄が露出しても歯髄からの出血が止まって、痛みががまんできるようなら歯髄の表面を保護して経過をみることができます。
もし、患者さんと歯科医との信頼関係が十分にあれば、痛みを我慢し、いったん軟らかくなった組織を残して殺菌し、蓋をして二〜数ヵ月経過をみてから、もう一度開けてみるというような慎重な処置も可能です。
歯髄を殺す
歯髄がダメージを受けているとき、感染を防ぎ、刺激から守り、保護するのが歯内療法です。しかし生かすことが難しい場合は、除去するために歯髄を殺してしまうこともあります。生かすか殺すかの判断は、歯髄が受けているダメージの程度によります。
実際に、歯髄を守るかどうかは、患者さんと歯科医との信頼関係に左右されます。ダメージを受けた歯髄を生かせば、後で痛みが出たり、自然に歯髄が死んでしまうなどトラブルの可能性が高くなるからです。
【コラム】亜ヒ酸失活法
歯髄処置を行う前に歯髄の知覚をなくすために行う処置であすが、一般に粗悪な治療の代名詞として用いられています。アルゼン(三酸化ヒ素)を用いるこの方法は、薬剤が局所から漏れ出すと大きな組織破壊を招きます。薬物性の歯根膜炎を起こすことも少なくありません。この目的では局所麻酔が望ましいとされています。歯髄を殺すためにはパラホルム製剤を用います。ただし、局所麻酔では循環器系疾患などをもつ患者で稀に致死性の偶発症を生ずる恐れがありますが、失活法では重篤な偶発症の事例がありません。
感染根管治療
ひどいむし歯の痛みを我慢していると、歯髄が死んで痛みを感じなくなってしまいます。死んだ歯髄は腐敗して根の周りの骨の中に膿がたまります。歯を叩くと痛みを感じる状態です。こうなったら、感染源になっている腐敗した歯髄をきれいに除去して、出口をふさぐ処置が必要です。
抜髄治療後でも、エックス線で根の先に黒い陰が見える場合は、膿がたまっている状態なので、処置のやり直しが必要です。
抜髄
歯髄のダメージが大きくトラブルが起きそうなとき、または痛みを避ける必要があるとき、歯髄を除去することがあります。
歯根の中(歯髄腔)の清掃の仕方、使う薬剤、出口の封鎖には様々な方法があります。空洞のかたちは樹の根のように複雑なものや巻き貝のように細く湾曲したものもあります。しかも鉛筆の先ほどの小さな、見えない場所の処置ですから、処置結果は必ずしも確実であるとは限りません。治療後、何年もしてからエックス線で根の先に黒い陰が見えることがあります。こうなったら処置のやり直しが必要です。
歯の神経は、痛みの信号で危険を教えてくれる組織です。抜髄は、痛みの信号を避けるために信号機を外してしまう処置ですから慎重にすべきです。