


●家族の健康はリスクコントロールから
慢性疾患の原因は、わずかな遺伝的素因と大きな生活習慣です。糖尿病、高血圧、痛風などなど。細菌感染がきっかけになっていることがわかった胃潰瘍も、生活習慣によって発症が左右されます。むし歯も歯周病も細菌感染症ですが、やはりわずかな遺伝的素因と大きな生活習慣によって発症・進行が左右されます。健やかな生活をおくるには、まず病気の成り立ちを知っておくこと。そして病気が発症する前に、対処することです。
むし歯のリスク
病気の原因が分かれば、何がその病気のリスク(かかりやすさ)になるか、何を改めればいいか、簡単に分かります。
むし歯のリスクは、
- 原因菌の感染と量
- 頻回の飲食
- 唾液の性状や量の問題
- 歯の性状や形態
- 口のなかの清掃不足
まず唾液のことをご存じですか?
歯の健康を守る唾液のはたらき
唾液は、食べものをのみ込みやすくし、消化を助け、食べもののカスを洗い流すだけでなく、酸を中和する作用(緩衝作用)や抗菌作用、そして歯や歯ぐきを病気から守るはたらきをしています。
脱灰と再石灰化
唾液は通常リン酸カルシウムが常にほぼ過飽和の状態に維持されています。このため歯が歯石のような殻で覆われてしまわないように唾液のなかのある種のタンパクが働き、表面近くでの過飽和が維持されているのです。過飽和ですから、わずかに酸性になるとミネラルが奪われ、中性に戻ると歯の表層下にカルシウムイオンやリンイオンが結晶化するという揺れ動きを繰り返し、バランスを保っています。
【コラム】石灰化の制御
生命が誕生した太古の海は、ミネラルが過飽和の状態だったと考えられています。骨格のない生物が生きるためには、まずからだの回りが石灰分で固まらないように制御する仕組み(石灰化制御タンパク)必要でした。からだの特定のところだけ石灰化するような仕組みができて骨格のある生物が生まれたと考えられています。唾液はこの仕組みを今日に受け継いでいます。唾液の海では、歯と唾液との間でミネラルが出たり入ったりしているのです。
Knoll AH, et al.,Science, 1999
Luo G, et al.,Nature, 1997